シリコンウエハーにプロ生ちゃんを描いてみた
※ みなぎ さんによる記事です。
研究で条件出しをする必要があったので、パターンをプロ生ちゃんにしてみました。
プロ生ちゃん、シリコンウェハーに彫ったよ! pic.twitter.com/cCr6var90K
— みなぎ🌱 (@minagi_yu) July 6, 2019
できあがりは、こんな感じです。
今回は、シリコンウエハー上に堆積させた二酸化ケイ素膜(SiO2膜)をエッチングする方法でプロ生ちゃんを描きました。
洗浄
プロセスの出発点は基板の洗浄です。おろしたてのウェハー(基板)は表面が汚染されていて半導体作製に使える状態のものではないためきれいにします。
まずは、ピラニア洗浄(SPM 洗浄)で基板表面の有機物を取り除きます。ピラニア溶液とは、濃硫酸:30% 過酸化水素水 = 3:1 の割合で混合した液体です。しゅわしゅわしながら汚れとなる有機物を分解していきます。
つぎに、RCA 洗浄で SiO2 膜やパーティクル(ほこり)などを取り除きます。RCA 洗浄はアンモニア水などを使った複数の洗浄をまとめた言い方です。
SiO2 膜の堆積
ウェハーの上に Si2 膜を堆積させていきます。堆積するのは CVD という方法を使いました。CVD とは、熱した基板に SiO2 のもとになるガスを流し込んで化学反応を起こすことで表面に膜を堆積させていきます。
基板の全面に SiO2 膜が乗っています。
レジストの塗布
プロ生ちゃんの絵を描くために、レジストという保護膜を基板表面に塗布します。このレジストというものは、光が当たったところは溶けて無くなり、光が当たっていないところは残るという性質があります。基板に均一に塗れるように、基板を高速回転させながら塗っていきます。
基板の全面に SiO2 膜、その上にレジストが乗っている状態です。
露光
レジストに光を当てます。今回はプロ生ちゃんの輪郭線の部分のSiO2 膜を削りたいので、輪郭線の部分のレジストがなくなるようにその部分にだけ光を当てます。大量生産の場合は、マスクという光を遮るものを作ってから光を当てます。しかし、マスクはとても高価なので研究室の試作ではプロジェクターのようなもので光を当てたり、微細なパターンの場合は電子線のビームを当てたり、マスクを使わなくてよい方法を取ります。プロ生ちゃんの画像は IC レイアウト CAD をつかって露光装置が使えるように変換しておきます。
下の図だと「プ」の部分のみに光を当てます。わかりやすいように色を変えていますが実際には色は変わらないのでちゃんと露光されているかは、わかりません。レジストの化学変化が起こっただけです。
基板の全面に SiO2 膜、その上にレジストが乗っている状態です。
現像
光を当てたところのレジストを洗い流します。基板を現像液につけると光が当たったところのレジストのみが流れて、当たっていない部分は残ったままなので、像が浮かび上がります。
基板の全面に SiO2 膜、その上にプロ生ちゃんのパターンが描かれていない部分にはレジストが乗っていて、プロ生ちゃんのパターン上は SiO2 膜が露出している状態です。
現像した時の基板です。プロ生ちゃんの輪郭部分は SiO2 膜が露出しているので赤く見えていて、レジストのある部分は緑色に見えてます。
エッチング
基板をフッ酸の中に漬けて SiO2 を溶かします。上にレジストが乗っているところはフッ酸があたらないので溶けません。
プロ生ちゃんのパターン部分は基板が露出していて、その他の部分は SiO2 膜の上にレジストが乗っている状態です。
レジストの除去
レジストは不要になったので除去します。剥離液をつかってレジストを洗い流します。
これで、プロ生ちゃんのパターン部分は基板が露出していて、それ以外の部分は SiO2 膜が乗っている状態になり完成です。
完成した写真をもう一度載せます。SiO2 膜の部分が赤く見えていて、シリコンウエハーの部分は光が反射して見えているのが、わかります。
応用
今回は背景色が赤色になっています。SiO2 が赤色なわけではなく、薄膜による光の干渉で赤く見えています。高校の物理で習うやつですね。詳しい原理は高校の物理の教科書を見ていただくとして、膜厚を変えれば色が変えられるので全体を少しエッチングしてプロ生ちゃんカラー?の緑色に変えてもいいかもです。