音響カプラでテレワーク
昨今、感染症対策などのため、政府が企業へ在宅勤務の推進を呼びかけるなどテレワークが注目されています。テレワークの問題のひとつとして、コンピュータ間の通信があります。そこで今回、今後のテレワークでの活用を見越し、公衆交換電話網を利用してコンピューター間の通信を可能にする通信機器「音響カプラ」を入手し、コンピュータ間のデータ通信を試みました。
発信側は、音響カプラ ACTAM C300A 株式会社田村電機製作所 1986年製です。1秒あたり 300bit の通信速度でデータ通信が行えます。
着信側は、Mobile Gear II MC-R500 日本電気株式会社製 2000年発売(いきなり時代が飛びましたが気にしない)。モデム内蔵です。Windows CE Version 2.0。
実際にデータ通信を行っている映像
神奈川-大阪間でデータ通信を行った映像です。少しズレがありますが、ふたつの動画を同時に再生するとやりとりがわかります。チャットおよびファイルを送信しています。
発信側
着信側
設定や通信のコツ
実は、データ通信が実現するまで、試行錯誤を重ねました。
発信側(音響カプラ ACTAM C300A)
一般的なモデムの場合は、相手側が着信したときに アンサートーン という音を出して、着信したことを検知しますが、この音響カプラは接続などはすべて手動で行うため、アンサートーンを出す機能がないようです。
当初、音響カプラを着信側で用いようとしていましたが、アンサートーンを返さないため、通信が確立せず、着信側で使うのを断念しました(どうすればいいのだろう? ※)。
また、この音響カプラは受話器を載せたときに電源が入ります。音響カプラ側を発信側にした場合は、ダイヤル後の呼び出し音や、モデムが発するアンサートーンはノイズと見なされるためか、ダイヤル直後に受話器を載せてしまうとうまく接続できませんでした。
受話器で着信側が電話に応答したこと、およびアンサートーンが鳴ったのを確認したタイミングで受話器を載せると、キャリア(搬送波)を検知し接続が完了します。
高速なモデムには装備されているエラー訂正プロトコル(MNP4やV.42など)や圧縮プロトコル(MNP5やV.42bisなど)といった機能は音響カプラにはありません。また、データは音声に変換してやりとりするので、周囲のノイズの音などに敏感です。今回の音響カプラは電電公社指定の600形電話機に適合し、同型の黒電話を用意できたため、通信手順が確立できれば安定して通信を行うことができました。
送信側の通信ソフトは Tera Term を使用し、USB-シリアル変換ケーブルとシリアルストレートケーブルで音響カプラに接続しています。Tera Term の設定は、通信速度 300bps、データビット 8bit、ストップビット 1bit、パリティなし、フロー制御なし、漢字コードは送受信とも シフト JIS で設定しました。
着信側(Mobile Gear II 内蔵モデム)
ターミナルの設定をします。
- Windows 付属の「ターミナル」プログラムを起動します。
- 「新しいセッション」からダイヤルする「電話番号」を設定します。ただし、今回はその電話番号は使いません。入力しないと保存できないため指定します。
- 「モデムの設定」を開きます。
- 「ダイヤル前にターミナル ウィンドウに切り替え」にチェックします。
- 「通信速度」を「300」など、発信側と同じ設定にします。
- セッションを保存します。
- 作成したセッションをダブルクリックして接続します。
以上で、ターミナルウィンドウが開きます。
今回試みたケースでは、自動応答では、うまく動作しなかったので、ターミナルウィンドウで、直接 AT コマンド を入力して、手動応答します。
RING と表示されたら、“しばらく待ってから” ATA とコマンド入力し、応答します(動画参照)。すぐ ATA と入力した場合、接続できませんでした。
自動応答の設定の確認方法は、AT&V コマンドを入力します。
S000 レジスタが自動着信の設定で、ATS0=1 とコマンド入力すると、S000 の次の数値が 001 になり1回の着信で自動応答します。ATS0=0 で手動着信です。
写真
協力: UME-3 さん