ID/パスワードを預ける「ウケトル」と「マネーフォワード」や「freee」の違い

2019/05/18Web Service

ヤマト運輸が、自動荷物追跡と再配達依頼ができるアプリ「ウケトル」は、正式に連携したアプリではないと通知し、話題になっています。

クロネコメンバーズ Web サイトのお知らせ

ウケトルは、アプリのユーザーが入力したクロネコメンバーズの ID・パスワードを使って、クロネコメンバーズのサービスにログインし情報を取得する仕組みがあるようです。

これに関連して、「マネーフォワード」や「freee」などのサービスも、ユーザーが入力した ID・パスワードを使ってネットバンキングにログインし情報を取得する仕組みがあり、ウケトルとマネーフォワード等は同じようなサービスではないか? という話題も上がっています。

違いまとめ

結論から。

  • スクレイピングにより情報を取得している点は、同じ(※ 許諾を受けて API 等を利用している一部のサービスを除く)
  • サービスを提供する事業者(ヤマト運輸や銀行)の許諾を得ていない点は、同じ(※ 許諾を受けて API 等を利用している一部のサービスを除く)

ただし、ネットバンクからの情報取得に関して、平成14年4月に 全国銀行協会 が公表した「インターネット・バンキングにおいて留意すべき事項について〔追補版〕」で、口座情報を取得し集約するマネーフォワードのようなアカウントアグリゲーション・サービスについて「アカウントアグリゲーション・サービスに関する基本的な考え方」を示しています。

アグリゲーションサービス提供者に対する留意事項が記載されており、(金融機関の許諾なく)情報取得が可能とも考えられます。マネーフォワードでは、この考えに沿って運用しているとのこと(問い合わせ結果)。freee では、許諾を得ている銀行と得ていない銀行があるとのこと(問い合わせ結果)。

アプリやサービスを使うときの注意点

ID・パスワードを預け、ユーザーに代わりログインし情報を取得するアプリやサービスの利用は、あくまでユーザーが希望して行われることであり、各自で預けても良いか、サービス提供事業者への信頼度や、利便性と損害時のトレードオフなどを判断して使いましょう。

例えば、ネットバンクの場合、ログインするだけでは送金はできません。クロネコメンバーズのサービスでは、別の場所へ荷物を送ることも可能です。

また、利用規約では、事業者は責任を負わないと記載されていることが一般的です。ただし、事業者の手落ちによる損害は「一切責任を負わない」などと記載されていたとしても、無効と判断される場合もあります(消費者契約法8条等)。

電子決済等代行業等に関する記載

マネーフォワードや freee に関して、許諾を得て API を利用している銀行の一覧や、契約内容などは公開されています。

ところで、銀行の口座情報を取得することが、電子決済等代行業に当たるのか調べてみたところ、銀行法第2条第17項第2号の業務にそのような記載があります。

銀行に預金又は定期積金等の口座を開設している預金者等の委託(二以上の段階にわたる委託を含む。)を受けて、電子情報処理組織を使用する方法により、当該銀行から当該口座に係る情報を取得し、これを当該預金者等に提供すること(他の者を介する方法により提供すること及び当該情報を加工した情報を提供することを含む。)。

「電子決済等代行業者は、第二条第十七項各号に掲げる行為(同項に規定する内閣府令で定める行為を除く。)を行う前に、それぞれ当該各号の銀行との間で、電子決済等代行業に係る契約を締結し、これに従つて当該銀行に係る電子決済等代行業を営まなければならない。」ともされており、許諾なくネットバンクに代理アクセスして良いのか疑問が残ります。


※ 法曹による投稿ではありません。

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Posted by jz5